栄養・食事について

1) 脳卒中や心臓病を予防するための食生活のポイント

食生活のポイントとしては、主食(ごはん、パン、麺類など)・主菜(肉、魚、卵、大豆製品など)・副菜(野菜、きのこ、海藻類)をそろえることを意識してみましょう。そのほか、脳卒中予防十か条(日本脳卒中協会)や虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)(日本循環器学会等合同研究班)において、「塩分」「脂肪」「コレステロール」「太りすぎ」「アルコール」があげられています。

塩分

塩分の摂りすぎは血圧の上昇につながります。日本人の食事摂取基準(2020年版)で食塩の摂取目標量は男性1日7.5g未満、女性1日6.5g未満と定められています。また血圧の高い方では1日6g未満が目標とされています。2019年の国民健康・栄養調査では日本人の平均食塩摂取量は1日10.1gであり、家族みんなでの減塩が重要です。

脂肪・コレステロール

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、脂質エネルギー比率の目標量は20~30%と定められています。脂質異常症を認める方では20~25%が目標とされており、例えばエネルギー摂取量が1日1800kcalの場合、脂質は40~50g/日が目標となります。脂質の摂りすぎにご注意ください。また、食物繊維には余分な脂質やコレステロールを吸着して体外に排出する働きがあります。食物繊維をしっかりとるために、毎食1~2品の野菜料理をとるようにしましょう。

太りすぎ

太りすぎの改善も、脳卒中や心臓病の予防につながります。「太りすぎ」を指摘された場合は、食事内容の見直しや食べ方の工夫、運動などを組み合わせ、少しずつ体重を減らしていきましょう。

アルコール

アルコール摂取は適量であれば虚血性心疾患の発症率を低下させるとも言われていますが、アルコール摂取量が多いと血圧を高めることが報告されています。エタノール換算で1日20g以下(日本酒1合,ビール中ビン1本,焼酎半合弱、ウイスキー・ブランデーダブル1杯、ワイン2杯弱)に抑えましょう。飲酒しない日を設けることも重要です。最低週2回は飲まない日をつくりましょう。

2) 脳卒中や心臓病の発症後に食欲が低下した場合の注意点

脳卒中や心臓病の発症後には、気分が落ち込み、食事の摂取量が少なくなってしまうことがあります。十分な食事がとれないと体重が減少し、低栄養となり、体力が低下してしまいます。そういった場合に活用できるのが栄養補助食品です。飲料タイプやゼリータイプがあり、ドラッグストアやスーパーの介護食コーナーで販売されています。また、液体の中鎖脂肪酸や粉末のプロテインなどを主食やみそ汁に加えることで栄養価を高めることもできます。

脳卒中後に嚥下障害を発症した場合には、発症前と同じような形態の食事を食べることが難しくなり、食事量が低下することがあります。このような場合にも栄養補助食品などの活用が推奨されます。嚥下障害を認める場合の食事の工夫については、下記のQ&Aもご参考ください。

脳卒中や心臓病の発症後には減塩が必要になりますが、過剰な減塩で食欲低下をきたし、食事摂取量自体が減少してしまっては低栄養をきたす可能性が高まります。ひとつの料理に塩味を感じるように重点的に味付けし、他は塩分を控えるといった工夫もありますので実践してみましょう。

3) 見直した食生活を継続する方法

食生活に限らずですが、どのような方でも継続することに苦労します。毎日の日常生活の中で、三日坊主になってしまうことも多々あるのではないでしょうか。しかし、小さなことでも継続することで大きな効果を生み出します。目標の決め方を工夫する、「やいがい」を得るなど、自分なりの継続の仕方をみつけてみてください。

1. 短期間の目標を決める。

大きすぎる目標は、到達が困難で、あきらめてしまうことも多くあります。「毎日ラジオ体操を1回行う」、「夜9時以降は食べない」など、達成しやすい目標を立ててみましょう。毎日の持続が困難であれば、「週3回」など週単位で回数を決めるのもよいでしょう。三日坊主も毎週繰り返せば、週3回実践できたことになりますよ。

2. 記録をつける。

継続するには、現状を知ることが大切です。毎日体重を測定し、記録をつけている方に減量を成功させている方が多いように見受けます。毎日の体重記録でもよいですし、運動した日や、間食を食べなかった日など、目標が達成できた日にはカレンダーに印をつけ、努力していることが目に見える形にしてみましょう。

3. 自分以外から反応がもらえる環境をつくる。

家族や友達など、第三者から反応があることは、継続の励みになります。思い切って、家族などに宣言して協力してもらう環境をつくることも、実践・継続しやすいポイントです。

4. 同じ目標をもつ仲間をつくる。

「仲間」は、楽しく続けられたり、支えてくれたりと、継続の励みになります。コロナ禍で、団体行動が難しい場合や、同じ目標をもつ知り合いがいない場合は、ソーシャルネットワーク上でチームが作れるようなサービスもありますので、利用してみてはいかがでしょうか。

4) よくある質問

上手に減塩する方法はありますか?

塩分控えめでもおいしく調理するには、塩味以外の酸味、香味、辛味、うま味などを上手に活用することがポイントです。

  1. レモンやすだちなど柑橘類の果汁、酢などの酸味を利用する
  2. だしや食材のうま味をきかせる
  3. 胡椒などの香辛料、大葉やみょうがなどの香味野菜を使う

などの工夫で、減塩でも風味豊かな食事を楽しむことができます。

また、塩分が多く含まれている代表でもある、漬物類や、めん類などに気を付けることはもちろんですが、食品に含まれる、隠れた塩分にも注意が必要です。ハムやベーコンなどの肉の加工食品、ちくわやかまぼこなどの練り物は、思った以上に塩分が多く含まれています。薄味に抵抗がある方は、これらの食品の摂取量や頻度を減らすだけでも減塩に繋がります。

上手な油のとり方のコツはありますか?

油とひとくちにいっても、様々な種類があります。体に良いと言われている油の成分は植物や魚などに含まれている不飽和脂肪酸です。その中に分類される多価不飽和脂肪酸にはn-3系とn-6系とがあり、悪玉とされるLDLコレステロールを減らす、中性脂肪を減らす、血圧を下げる等々、冠動脈疾患の予防効果が期待されています。

なお、n-3系が多い食品には、えごま油、あまに油、青魚があり、n-6系が多い食品には、紅花油、ひまわり油、コーン油、ごま油、ナッツ類などがあります。また、オリーブ油にも、LDLコレステロールを下げる効果が期待されるオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)が多く含まれています。

しかし、体に良いといわれている油も、とりすぎは禁物で、バランスよく適量を摂ることで効果が期待できます。そのため、毎食の食事をバランスよく、いろいろな料理法で食べることが、上手な油の摂り方につながります。

肥満を防ぐ食べ方はありますか? 

毎食、主食(ごはん、パン、麺類など)・主菜(肉、魚介類、卵、大豆製品、乳製品など)・副菜(野菜、海草、きのこ類など)を揃え、栄養素の偏りのない食べ方をすることが、上手に減量できるコツです。摂取エネルギー量を減らすために、主食を抜く方がいますが、飢餓感が強く空腹に耐えられなくなり、過食や間食を摂取される方が多くいます。

また、主食を抜くことでおかずの摂取量が増えるパターンもよく見受けられ、脂質や塩分過多になる可能性があります。主食は毎食、適量摂るようにしましょう。

また、主菜は、食材の選び方も大切です。肉の場合、脂質の少ない部位(赤身や皮無し)を選びましょう。良い脂質を多く含む青魚も食べすぎには注意しましょう。調理方法は、同じ食材でも揚げ物よりも蒸しものや茹でものの方がカロリーを抑えられます。

また、早食いは大食いに繋がります。よく噛んで食べることで、満腹中枢が刺激されて食べ過ぎを防ぐことが出来ます。低カロリーかつ噛み応えのある野菜やきのこ類などを組み合わせたり、しっかり噛めるよう具材を大きめにカットしたりするなど工夫してみましょう。

食事中にむせる、飲み込みにくいときの食事の工夫はありますか? 

ムセたり、飲み込みにくい食べ物は、パサつきやすい物(パン・カステラ・芋など)、口の中でばらけやすい物(ご飯・そぼろなど)、サラサラとした物(水、お茶などの液体)、はりつきやすい物(のり・わかめ・青菜類など)、粘り気が強い物(餅・団子など)、弾力があり、噛み切りにくい物(たこ・いか・こんにゃくなど)があります。これらの食べ物を飲み込みやすくするポイントとしては、

  • 適度な水分を含ませてパサつきを防ぐ
  • ゼラチンなどで固めてゼリー状にする
  • とろみをつけたり、マヨネーズで和えたりしてまとまるようにする
  • サラサラした液体にはとろみをつける
  • 食べやすい形状にする(一口大に切る・すりつぶすなど)
  • やわらかく煮込む

などがあります。
また、食事中の姿勢も大切で、やや前かがみにすることで、食道に食べ物が流れ込みやすくなります。
食べやすいもの、食べにくいものは人それぞれ異なります。①から⑥のような調理の工夫も試してみてください。

手が振るえて食事が食べにくいときはどうしたらよいですか? 

食事の飲み込みは問題なくても、食事を口に運ぶ動作が困難で食事が食べにくいという場合もあります。その際は「自助具」という、食べる動作を補助する食器があります。自助具には、握りが太いものや滑りにくいスプーンやフォーク、クリップタイプやピンセットタイプの箸、滑り止めがついているお皿などがあります。どの自助具も、握りやすい、摘まみやすい、滑りにくい等の工夫で食事を口に運びやすくしますので、一度試してみてはいかがでしょうか。

他、滑り止めシートも便利です。シートを敷いた上に食器を置くことで、食器が固定され、スプーンやフォークで料理がすくいやすくなります。また、食器と口の距離を短くするために、テーブルの高さを高めに調整することも効果的です。

食事の悩みは、ひとりひとり異なります。食事のアドバイスや栄養相談のご希望がありましたら、主治医や病院スタッフにおたずねください。

  • 執筆者徳島大学病院 栄養部
    副栄養部長 鈴木 佳子
    管理栄養士 筑後 桃子
    管理栄養士 小笠 有加
    管理栄養士 小河 ゆか
  • 作成日2022年10月31日