脳卒中の検査・治療について

1) 脳梗塞の治療

脳梗塞は予防が最も大切なことですが、起こってしまった場合には、できるだけ早期に治療を開始することが重要です。脳梗塞には様々な種類がありますが、特別な原因や血液検査の結果や過去の病気などから使用できない場合を除き、血栓を溶かす薬である「rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法」という点滴治療が可能です。ただし、発症から4.5時間以内に投与する必要があります。また太い血管がつまっている場合はカテーテルでの治療が有効です。

発症早期の治療が終わった後は、原因の特定を行って、それに適した予防が重要になります。高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロールの値に異常がある)などがあれば、その治療を行うことが大切です。喫煙、飲酒、肥満などは脳梗塞の原因になりますので、生活習慣の改善も重要です。

また、動脈硬化が原因と考えられる場合には、血液が固まりにくくなる薬(抗血小板薬)を飲むことが必要になります。
心房細動といわれる不整脈が原因の場合には不整脈の治療、また心臓の中に血栓ができにくくなるような薬(抗凝固薬)を飲むことが必要になります。このような予防的な治療は継続することが重要です。

2) 脳出血の治療

脳出血の原因でもっとも多い高血圧性脳出血の場合は、出血の量が少なければ血圧を下げる薬や脳のむくみを取る薬を用いて治療します。出血の量が多く、意識がわるくなるようなときは、出血の部位にもよりますが、開頭血腫除去術という手術によって脳の中の出血を取り除きます。脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻といった、血管異常の疾患が原因となって出血している場合は、それらの疾患に応じた根治的な治療が必要となります。

3) クモ膜下出血の治療

脳動脈瘤が破裂したことによるクモ膜下出血の治療は大きく2つの方法(脳動脈瘤クリッピング術・脳動脈瘤コイル塞栓術)があります。

脳動脈瘤クリッピング術 

全身麻酔下で行い、頭皮を切開し頭蓋骨を一部取り外し、クモ膜下腔を経由して脳動脈瘤にクリップをかける治療です。

脳動脈瘤コイル塞栓術 

全身麻酔下で行い、足の付け根から動脈にカテーテルを挿入し、さらに治療用の細いカテーテルを動脈瘤付近まで到達させ脳動脈瘤をコイルで充填して破裂しないようにする治療です。

これらの治療は、患者さんの年齢・全身状態・動脈瘤の場所や形等に応じて選択します。

頻度は低いですが脳動脈解離や脳動静脈奇形等の脳動脈瘤以外がクモ膜下出血の原因となることがあり、カテーテルで血管塞栓を行ったり、手術で脳動静脈奇形を摘出したりします。

これらの手術が終わった後も治療が終わった訳ではなく、クモ膜下出血特有の合併症対策が必要です。クモ膜下出血発症後の4-14日後は脳血管が縮んでしまう攣縮(れんしゅく)を来すことがあり、その場合脳梗塞を起こすことがあります。攣縮予防のため脱水や電解質の補正等を行います。

また脳室が拡大して水頭症を起こすことがあり、場合によっては脳室にたまった水を流すために、脳室シャント手術が必要になることもあります。

  • 執筆者徳島大学病院 脳神経外科
    准教授  兼松 康久
    講師   島田 健司
    助教   高麗 雅章
    助教   曽我部 周
    特任助教 山口 泉

    徳島大学病院 脳神経内科
    特任講師 山本 伸明
    医師   黒田 一駿
  • 作成日2022年10月30日